研究室について 

【小林功佳(こばやしかつよし)教授】

[専門]物性理論・固体物理・表面物理  [講義]量子力学U・固体電子論・計算物理学 ⇒お茶大HPでの詳細
[キーワード]表面物理・ナノ構造の物理

【研究内容】

表面やナノ構造の物質の性質を理論の立場から研究しています。
これまで、走査トンネル顕微鏡(STM)の理論的研究、ナノスケールでの表面電気伝導の研究[1-4,6]、中間サイズ・ナノワイヤーにおける非一様伝導の研究[5]などを行ってきました。
最近の興味は、 負の屈折をする媒質 です。
1968年にVeselagoは、誘電率・透磁率がともに負の媒質に光が入射すると、負の屈折が起こることを示しました。当時は、透磁率が負の媒質が存在しなかったので、負の屈折は単に理論上の議論にしかすぎなかったのですが、1999年にPendryらによって透磁率が負になる人工的な構造が提案されてから、現実のものになってきました。
このような物質はメタ物質もしくは左手系物質と呼ばれています。
さらに、2000年にPendryによって、負の屈折をする媒質を用いると、平面構造した完全レンズが作成できることが示されてから、この分野の研究は非常に盛んになりました。
ここで、完全レンズとは、近接場(エバネッセント波)まで忠実に再現するレンズです。従来のレンズは、回折限界というものがあり、光の波長より小さなものは見えないのですが、この完全レンズは、 回折限界を超えた微細なものまで見ることが可能なレンズ です。
現実には、もちろん、厳密な意味で完全なレンズは存在しないですが、それでも、従来の回折限界を超えたレンズができることは大きな進歩です。
このメタ物質は、普通の物質に対して、ある意味で相補的な媒質と考えることができます。
例えば、物質とそれに対応するメタ物質を重ね合わせたものを考えると、それは入射してくる波に対して、あたかも対消滅を起こした何も無い空間のように振舞います。
私の興味は、この相補媒質の系を光だけでなく一般の波、特に電子波へ拡張することです。そして、それを固体表面内部の観察に応用できないか、と考えています。これまでに、相補媒質の一般的な定式化およびグラファイト格子の相補媒質について研究してきました[7]。
現在は、現実の結晶での相補媒質系の実現に向けて理論的に研究しています。

【参考文献】

1.K. Kobayashi: Physical Review B 65 (2002) 035419. 
2.K. Kobayashi: Physical Review B 66 (2002) 085413. 
3.K. Kobayashi and E. Ishikawa: Surface Science 540 (2003) 431. 
4.K. Kobayashi: Physical Review B 68 (2003) 075308. 
5.K. Kobayashi: Physical Review B 69 (2004) 115338. 
6.K. Kobayashi: Surface Science 583 (2005) 16. 
7.K. Kobayashi: J. Phys. Condens. Matter 18 (2006) 3703. 



金電極に挟まれたシリコンナノワイヤー     相補媒質グラファイト格子の相補媒質界面
    



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